妊娠中期から後期にかけて、「あれ?足がパンパン…」「靴がきつくて履けない」「象の足みたい…」と感じる妊婦さんはとても多いです。足や足首、ひどい場合はふくらはぎにかけてむくみ(浮腫)が現れ、だるさや重さ、痛みなどを伴うこともあり、日常生活でつらさを感じている方もいらっしゃるかと思います。
むくみは妊娠中の生理的な変化の一つですが、不快な症状ですよね。今回は、なぜ妊婦さんはむくみやすいのか、その原因を知り、今日からすぐに実践できるむくみ解消法や予防策を詳しくご紹介します。つらいむくみを少しでも和らげて、快適なマタニティライフを送りましょう。
なぜ妊婦さんはむくみやすいの?その主な原因
妊娠中にむくみやすくなるのは、様々な体の変化が関係しています。
- 体内の水分量・血液量の増加:赤ちゃん、胎盤、羊水などを維持するために、妊娠中は体全体の水分量が妊娠前よりも約6~8リットルも増加すると言われています。血液量も約1.5倍に増えるため、血管にかかる圧力が高まり、血管から組織へ水分が染み出しやすくなります。
- ホルモンの影響:妊娠中に分泌されるリラキシンなどのホルモンが血管を拡張させたり、血管壁を柔らかくしたりすることも、水分が血管外に出やすくなることに関係していると考えられています。
- 大きくなった子宮が血管を圧迫:妊娠が進み、子宮が大きくなると、骨盤内にある大きな血管(下大静脈など)を圧迫するようになります。特に妊娠後期にはこの影響が顕著になり、足から心臓へ戻る血液の流れが悪くなります。これにより、足に血液や水分が滞りやすくなり、むくみの大きな原因となります。
- 重力の影響:立っている時間が長かったり、デスクワークなどで座りっぱなしだったりすると、重力によって水分が下半身、特に足に溜まりやすくなります。
これらの要因が組み合わさることで、妊婦さんはむくみやすくなるのです。
今日からできる!妊婦さんのための足のむくみ解消&予防策
むくみを完全にゼロにするのは難しいかもしれませんが、工夫次第で症状を和らげることができます。すぐに試せる方法をご紹介します。
対策①:とにかく「足を高くして休息」を習慣に
最も効果的で基本的な方法です。横になる時は、足の下にクッションや座布団を重ねて置き、足を心臓より高い位置に上げましょう。こうすることで、重力を利用して足に溜まった水分や血液が心臓に戻りやすくなります。寝る時はもちろん、休憩する時も意識して行いましょう。座る時も、足元に台などを置いて足を高くするだけでも効果があります。
対策②:適度な運動とこまめな体位変換
長時間同じ姿勢でいることは、むくみを悪化させます。立ちっぱなしや座りっぱなしの時間を減らし、こまめに体勢を変えましょう。可能であれば、体に負担の少ないウォーキング、マタニティヨガ、マタニティスイミングなどの適度な運動を取り入れると、血行促進に繋がりむくみ解消に役立ちます。難しい場合は、1時間に1回程度、軽い足踏みをしたり、足首をぐるぐる回したり、足指をグーパーさせたりするだけでも効果があります。
対策③:着圧ソックスやストッキングの活用
医療用やマタニティ用の段階着圧ソックスやストッキングは、足に適度な圧力をかけて血液やリンパ液の流れをサポートし、むくみ予防に非常に効果的です。特に、朝起きてすぐに着用することで、日中のむくみを抑える効果が期待できます。締め付けが強すぎず、自分に合ったサイズと圧力のものを選びましょう。寝る時は基本的に外してください。
対策④:食生活の見直し(特に塩分とカリウム)
- 塩分(ナトリウム)を控えめに:塩分を摂りすぎると、体内のナトリウム濃度を薄めようとして水分を溜め込みやすくなります。加工食品、外食、インスタント食品などに含まれる塩分量に注意し、薄味を心がけましょう。
- カリウムを積極的に摂る:カリウムには、体内の余分なナトリウムを体外に排出するのを助ける働きがあります。バナナ、アボカド、ほうれん草、きのこ類、海藻類、芋類などに多く含まれます。食事に取り入れてみましょう。
対策⑤:十分な水分補給
「むくんでいるのに水を飲むのは逆効果では?」と思うかもしれませんが、実は水分不足は体が危機を感じてかえって水分を溜め込もうとし、むくみを悪化させる場合があります。カフェインの少ない水、麦茶、ルイボスティーなどを、喉が渇く前にこまめに飲むことが大切です。
対策⑥:心地よいマッサージ
足首からふくらはぎにかけて、心臓に向かって優しくマッサージするのも効果的です。強く押すのではなく、リンパ液の流れをイメージしながら、さするように行うのがポイントです。アロママッサージをする場合は、妊娠中でも安全なアロマオイルを選び(医師や専門家に相談推奨)、リラックス効果も高めましょう。
対策⑦:体を温める&むくんだ部分を冷やす
体全体を冷やすと血行が悪くなりむくみにつながることがあるため、靴下や腹巻などで体を冷やさないように注意しましょう。一方、むくんで熱っぽい感じがする足を冷やす(クールシートを貼る、冷たいシャワーをかけるなど)のは、炎症を抑えたり、血管を一時的に収縮させてむくみを和らげたりするのに効果的です。
対策⑧:寝る時の姿勢も重要
妊娠後期におすすめなのが、左側を下にして横向きに寝る体勢です。体の右側にある大きな血管(下大静脈)への子宮の圧迫を減らすことができ、足からの血液が心臓に戻りやすくなるため、むくみの軽減に繋がります。抱き枕などを使うと、より楽な姿勢を保てます。
こんなむくみは要注意!すぐに医師に相談すべきサイン
ほとんどの妊婦さんのむくみは生理的なものですが、中には注意が必要なむくみもあります。以下のような症状が見られた場合は、妊娠高血圧症候群などの可能性も考えられるため、すぐに医療機関に連絡して相談してください。
- 急にむくみがひどくなった場合
- 足だけでなく、顔や手にまで強いむくみが出た場合
- むくみと共に、強い頭痛、目がチカチカする(視覚異常)、みぞおちのあたりが痛むなどの症状がある場合
- 片足だけが急にひどくむくんで、痛みを伴う場合(深部静脈血栓症の可能性も)
妊娠中の足のむくみは多くの妊婦さんが経験する、頑張っている証でもあります。つらい症状ですが、今回ご紹介した様々な解消法や予防策を日々の生活にできる範囲で取り入れてみてください。
ご自身の体を大切に、無理はせず、リラックスして過ごすこともむくみ対策の一つです。もしむくみが改善しない場合や、急な変化があった場合は、迷わずかかりつけの医師や助産師さんに相談しましょう。
少しでも快適なマタニティライフになりますように!